ボーカルミックス手順について

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はじめに

これからボーカルミックスにチャレンジする方、
やってみたいけど、どんな手順で実施しているのか解らない方向けに
記事を作成しています。

目次

ボーカルのノイズ処理

最初に、ボーカルトラックに含まれる
ノイズ成分を除去します。
私はizotopeのRX7というソフトで作業しています。
RX7はとても優れたソフトではありますが、
全てのノイズをクリアに除去できるとは限りません。
ノイズを除去するということは
少なからず原音に影響します。

ノイズを除去するか、原音を保つか、
天秤にかけることになります。
なので、ボーカルは録り音が重要となります。

ボーカル録音でのポイントをひとつ挙げます。

録音時に口の中を水で潤す

水で潤すことにより、口の開閉時に発生する
「ペチャ」「クチャ」といったノイズを
抑えることが可能です。

DAWのテンポ設定

次に、DAWに必要なデータ
(ボーカルトラックやオケ(バック音源)を取り込み
曲のテンポをDAWに入力します。

DAWテンポ設定

テンポは凡その値を入力し、
小節の頭とトラックを合わせます。

小節頭合わせ

その後、曲の後半部分で
メトロノームと同期しているか確認します。
拘った曲ではBPM180.3等
少数単位で設定している場合もあるので、
ぴったり合わせましょう。

ピッチ、タイミング修正

テンポが一致したら、ボーカルのピッチ(音程)、
タイミングを修正していきます。

私が使用しているMelodyneでは
各フレーズの音量調整が可能なので、
ある程度平均化します。
(特に「ん」の発音は音量が落ちるので
この時点で調整しておくと後が楽になります)

音程が合っていても
オケに馴染まない場合はピッチを補正していきましょう。

ボーカルの下処理

EQで音質の補正、
コンプレッサーで音圧の平均化を実施します。
EQでは必要の無い低域、
(ベース、バスドラムの担当領域)はバッサリカットしましょう。
ハイパスフィルターを150Hz付近で設定し
音質変化を確認しながら周波数を決定します。
さ行等の部分(歯擦音等)がうるさく聞こえる場合は、
ディエッサー(マルチバンドコンプレッサー)で圧縮しましょう。

ミックス前のボーカルトラック下処理は『iZotope Nectar 3』が非常に便利です。

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コーラストラック作成

ボーカルの処理が完了したら、
必要に応じてハモリ(コーラス)パートを作成します。
私は先程紹介したMelodyneでコーラスを作成しています。

スケール入力し自動でコーラスを作成するプラグインも在りますが、
POPSでは転調、部分転調が多いためあまり使えない印象です。

転調をあまり用いないEDM等では使えるかと思います。

コーラストラックのテクニックについては『ダブリングとは』が参考になります。

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バック音源の下処理

必要に応じてオケ(バック音源)もEQ等で処理していきます。

MID成分処理

例えば、MID部分(真ん中から聞こえる成分)に
極端に音が集中している場合は、
EQでMIDの中域を少しカットすると良いです。
(カットし過ぎると、モノラルにしたときに
特定の音が聞こえなくなってしまいます)

SIDE成分処理

他、SIDE部分(横から聞こえる成分)の
低域が大きい場合も少しカットすると、
曲全体が安定します。

音圧についても、部分的に大き過ぎる、
小さすぎる場合はこの時点で処理しておきます。
コンプレッサーで処理したり、
波形をカットしてゲイン量を調整したり・・・

バック音源にボーカルを配置する

オケ(バック音源)に適切な処理をしないと、
ボーカルがあまり聞こえません。
聞こえないからとボーカルの音量を上げると、
オケが小さく聞こえてバランスが取れないことが有ります。
これは、ボーカルとオケの周波数帯域が
被っている為に発生します。

周波数が被っている場合は、
オケの被っている周波数帯域をカットします。
女性、男性、曲のキー、
声質等により周波数が異なるので
断定することは出来ませんが、
700~2.5kHzくらいが特に
バッティングし易い帯域なのでチェックしてみて下さい。

neutron eq

大きくカットすると違和感が出るので、
ダイナミックEQをオケに挿入し
トリガ(サイドチェイン)をボーカルトラックにすると良いです。
この処理をすると、
歌っている間はバランス良く聞こえて
歌っていない時は、オケ音源の音質が保たれます。

空間系エフェクト

ドライ音だけでは
前面に張り付いたままになってしまうので、
空間系のエフェクトを使って広がりを持たせます。

テクニックとして
ショートリバーブと
ロングリバーブを組み合わせる方法を紹介します。

ショートリバーブ

ショートリバーブ設定

お持ちのリバーブのプリセットから
ルームリバーブ系を選択します。
このルームリバーブをバスに設定し、
ボーカルトラックからセンドします。
このセンド量でリバーブの音量を決定します。
ルームリバーブをそのまま使用すると、
低域が強く濁った音になってしまうので
ハイパスフィルターで低域をカットします。

また高域が大きいと存在感が強くなりすぎる事と、
ボーカルの実音と重なったときにキンキン
と耳に響いてしまうためカットします。

ショートリバーブEQ設定

ロングリバーブ

ロングリバーブはプリセットのホールリバーブ系を選択します。
(ボーカルの場合、プレートリバーブが良く合います)
ショートリバーブと同様に、
バストラックを作成しボーカルトラックからセンドします。
EQもショートリバーブのように処理をします。

このまま再生すると、残響音が長い為
ボーカルの実音に被り、濁って聞こえてしまいます。
この状態を回避するため、以下テクニックを活用します。

リバーブオートメーション

ロングリバーブトラックのボリュームに
オートメーションを書いて
歌っている間はボリュームを抑え、
歌い終わりにボリュームを上げるようにします。
この方法は時間はかかりますが、
リバーブ音を自由に操ることが可能です。

リバーブダッキング

ロングリバーブトラックにコンプレッサーを挿入し、
トリガ(サイドチェイン)に
ボーカルトラック(実音)を設定します。
この設定により、歌っている間は
コンプレッサーによりリバーブ音が圧縮、
歌い終わりで開放され
残響音が聞こえてくるようになります。
こちらの方法は時間はかかりませんが、
リバーブ音の微調整が難しいです。
リバーブダッキングの具体的な設定については下記記事が参考になります。

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音量バランス調整

リバーブの設定が終わったら、
ボーカルとオケの音量を調整します。
POPSの場合、Aメロ部分で音量の調整を実施すると
サビ部分でボーカルが聞こえ難い状態になるかと思います。
これはAメロに比べ、
サビは演奏パート数が多い事が原因です。
こういった状態を回避するために、
ボーカルトラックの
ボリュームオートメーションを設定します。

ボリュームオートメーション設定

曲全体を聞いたときにボーカルが
一定に聞こえるように設定するのが基本になります。

マスタリング

最後に音圧を上げるマスタリングという処理を実施します。

アルバム等で複数の楽曲を収録する場合は、
全ての曲の音圧が一定になるようマスタリング実施します。

EQ処理

EQで弱い帯域を持ち上げたり、
聞かせたいパート(ボーカル)が聞こえ易いように調整します。

コンプレッサー、リミッター

ある帯域の音が瞬間的に大きい場合があるので、
マルチバンドコンプレッサーで圧縮します。
最後に平均化したトラックを
リミッター(マキシマイザー)で持ち上げます。

最近はCD用ではなく、
youtube等のストリーミングサービスで
公開される事が多いと思います。
このようなサービスでは音量が標準化されるので、
ただ音圧を稼ぐのではなく
各サービス毎に音圧を設定する場合があります。
この点については下記の記事が参考になります。

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最後に

長くなってしまいましたが、
私の実践しているボーカルミックス手順について
説明してきました。
ボーカルミックスの参考にして頂ければ幸いです。

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